英語論文の書き方

自分なりのメモです。周囲の英語巧者からもらったアドバイスの中で、自分の中で折り合いの付いた?、当確なルール的なのをまとめてみました。分野によっても文化の違いはありますし(当方、工学系)、アメリカとイギリスでも考え方が異なるようですので、参考程度にどうぞ。もしご指摘などあれば大歓迎(今後の参考にします)。

副詞(句)の使い方

日本語では文頭に副詞(句)を置くのが一般的ですが、この感覚を英文にも当てはめた結果、文頭に however, therefore, and, in this paper, in the figure, ... などがやたらと書かれていることがあります。こういう感覚は英語にはないそうで、安易な副詞スタートは避けた方がベター。
そもそも副詞句を(敢えて)文頭に置くというのは、「その文においてその副詞句の働きが非常に重要である」ということを意味するらしく、そうでもないなら文末に置け(あるいは消せ)と留学生に言われました。(金出先生の本によれば)一つの目安として、「文の頭が副詞なら-1点、それ以外なら+1点として採点すると、英語の立派な読み物ではだいたい合計10点になる」そうです。日本語でも「そして・・・だから・・・」って何度も繰り返すと賢くない印象になりますが、英語も似たようなとこなんでしょうか。先頭配備型の副詞(句)はここぞというところで大切に使いましょう、ということのようです。
あと副詞の注意点といえば、but, so(「だからさ」に近いみたい) は口語風なので、論文では however/nevertheless, therefore/thus を使うことでしょうか(常識だとは思いますが)。留学生に「なんで?」とたずねると、「こちらのほうがカッコいいから」だそうです。うむむ、そういうものか(笑)。

安易に「受身表現」を使うな

日本語では「○○を◇◇に適用します」というような動作主のない文が比較的許されるため、英語でもこれの直訳である「○○ is applied to ◇◇」のような受身表現が多用されるようです。が、これはあまり良い傾向ではないようで、よく訂正されました。以下理由↓。

  • 論文では「物事を正確に伝える」ことが要求されており、動作主が明確な能動表現ほうが当然ながらよりクリアであるため。
  • 受身表現は、敢えて動作主を明らかにしたくない、あるいはその必要がない、というニュアンスを持つため。それを意図していない部分で使うのは避けたほうがベター。
  • 受身表現は単語数が多くなり、いわゆる回りくどくなるため。能動表現に比べて押しが弱くなる模様。
  • 「A new method which 〜〜〜 is proposed.」のように、いつまでも述部が表れず句の切れ目も掴みづらく、読みづらい場合があるため。

で、受身表現を回避するためには、本来動かないモノを動作主として用いるとうまく回避できます。この表現は日本語では馴染みがないので、日→英の直訳式ライティングだと生み出されない文だと思います。

  • This paper presents a new method which...
  • This section describes the detail of ...
  • Figure 3 indicates the rate of ...
  • The results show that ...

能動表現を使うことで in this figure などの余計な副詞句も不要になることが多く一石二鳥です。

「we」は極力使うな

「イギリス人の先生が、論文に“we”を使うな、とよく言ってる」と文系の友人が言っていたのですが、その理由がよく分からずモンモンとしていました。しかしネイティブ製の論文でも少し見かけたりするので、自分なりに理由を調べてみました。以下理由↓。

  • 論文では人格を消すべきであり、著者を“we”と表現するべきではないっ(キリッ。
  • “we”の表すものが、「著者達」なのか「著者達+読者達」なのか「人類」なのか、複数の意味が存在するために曖昧であるため。意味が「著者達」であれば、明確に“the authors”としたほうが誤解がない。
  • そもそも、文中の“we”が重要な意味をなしているケースはあまりない。提案にしても実験にしても、読者は著者達が実施したことを前提に読んでいるハズ。したがって不要。
  • 要約が論文データベースに掲載された際に“we”がデータベース管理者を指すようにも読める可能性がある*1ので、アブストでは絶対に用いるべきではない。
  • (アメリカ出身のマーク・ピーターセン氏『日本人の英語』によれば)アブストだけは慣例として特定の個人に関わりのないように書く習慣がある。よって“we”は使わない。

アブストについてはとりあえず納得したとしても、本文での是非についてはどうもスッキリしません。・・・結局、ケンブリッジ大学の学生?が書いた資料の中の次の一文を信じることで、自分なりに落とし前をつけました。

Use “we” but do so sparingly: too many “we's” sounds like a child's day out: “first we did this, then we did that.”
How to Write a Paper (p.12)

要するに「あんまり使いすぎると子供っぽいから、たまーに使うくらいにしとけ」という事らしいです。はい、素直にそうしまーす。
ちなみにアメリカ人の論文のケースでは Conclusions で「We believe that ...」とありました。確かに“we”を避けた「It is believed that ...」よりは動作主がハッキリする上に文意も強くなって良いかもですね。こういうケースでのみ“we”を使用する、を今後のポリシーにします。

むすび

よく決まり文句的に「In this paper, we propose a ...」と使われてますが、上記の理由からも、あまり上手い表現ではないことが納得できました。「This paper proposes a ... 」のほうが語数も少なく明快ですしね。
“we”の件についてはTwitterでの反応が多くてビックリました。“we”の件についてはイギリス人が特に気にするみたいですね(アメリカではそうでもない?)。
というわけで、ドクター卒業までに日本人離れした英語を書けるように頑張りますっ。

参考資料

  • How to Write a Paper (PDF)
    • 本場ケンブリッジ大学の学生?が書いた記事ようです。文量も少なくてまとまってるのですが、論文とは異なる文体で書かれているので、自分の英語力ではちょっと読みづらいです(^^;)。

素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術

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日本人の英語 (岩波新書)

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ここがおかしい日本人の英文法

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*1:うーん、ホントかなぁ。考えすぎとかじゃないのかなぁ。^^;