素人のように考え、玄人として実行する

素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術

素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術

画像処理分野で有名な金出先生の本。画像処理分野の研究者ならほとんど持ってるんじゃないかってくらい有名だと思う。内容は研究姿勢から語学からプレゼンまで幅広く扱われていて、しかも(例えばドラえもんこち亀のように)各章が独立しているので読みやすく、かつ意図がとても明確に書かれている。特に感銘を受けた点をまとめておく。
最も心に響いたのが、「うまくいく方法」を知ってるならそれをやれ。知らないなら「うまくいかない方法」をやってくれ。やりきれば失敗のパターンが分かるし、そちらのほうが何もしないより賢明である。という考え方。オレは、どうしてもウマい方法を見つけようと最初から粘って、結局何もできなかったっていうことが多いので、この言葉を肝に銘じたいと思った。
次が、研究について研究する「メタ研究」は研究に必要でないし役に立たない、ということ。例えば、数学的に意味のある研究をしたい!、カッコいいことをしたい!、というのは目標ではない。そういうのは終わってみて初めて分かる。やっぱり具体的な目標があるほうが取り組みやすい、とのこと。頭では理解できるが簡単ではないなぁ。・・・今後は頑張って頭を切り替えてみる。
また語学に関して、主語で始まる文は+1、副詞(句・節含む)で始まる文は-1、で採点すると、英語の立派な読み物ではだいたい10点になる。日本人はどうしても頭に副詞を付けたがる傾向があるそうな。確かにオレもよくそうする。これをやめたほうがいいとのこと。・・・話は前後するが、夏目漱石の「教師が教壇で逆立ちすることは possible であるが probable ではない」という説明がナルホドすぎて感動。
また欧米文化に関する話で評価制度の話が面白かった。日本人は評価を客観的尺度に便り、それを公平性維持のためというが、実際には決断の責任を回避するためであったりすると。なるほど。先生曰く、評価とは本来主観的なものであり、客観評価っていうのは欺瞞ではないか、と。確かにその客観的(と感じられる)制度を取り入れたのは、まさに主観的判断によるものだったりするなぁ。欧米では主観的判断で何が悪い?という感じらしい。言われてみれば日本人は人様から主観的に判断されることを嫌うかもしれない。島国文化なのかな。
そのほか細かい話題では、アイデアをオープンにすることへの是非、仕組みと型のどちらが先か、チャンク(塊)化、Enjoy文化と極める文化、が興味深かった。もしこれに近いことを実感する機会があれば、そのとき言及したいと思う。
金田先生は凄くアメリカンな思考なので人によって好き嫌いはあるかもしれないが、個人的にはかなり楽しめて読めた。内容が平易で読みやすいので、学生さんにはとてもオススメの書です。