シリコンバレーから将棋を観る
- 作者: 梅田望夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/04/24
- メディア: 単行本
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共感一つ目は、羽生さんの語る「高速道路論」。強くなるための環境(すなわち高速道路)が整備されて昔に比べ強くなるのは簡単になった。ただ皆がそれを利用するため皆が一斉に強くなった。だが、その先の道路の終端部で停滞が生じ、結局そこで競争が激化しているそうだ。ITで容易に世界中の情報を入手・発信できるようになった研究者と状況が同じだ。情報化社会共通の現象みたい。その競争を勝ち抜くには、羽生さん曰く「新しいことに挑戦し創造していく」しかないそうだ。なんだか耳が痛い(笑)。
共感二つ目は、「積極的な情報シェアが己を強くする」こと。一般的には情報を隠し持つことで他よりも優位に立とうとするのだが、あまりに進化の速い今の将棋会では、みなで研究に取り組み成果を互いに交換しないと、将棋の進化について行けず勝てないそうだ。なんだか凄くモッタイナイ気がするが、実際にそれが己の成果に結びつくんだから興味深い。確かによく考えてみれば、IT業界のオープンソースの広がりやICPCの情報発信(問題考察・ライブラリ公開など)も同じ状況だ。不思議なもので、情報を強く発信しているグループほど結果的には強くなっているように感じる。他に手の内がバレているにもかかわらずね。ただ、これって凄く勇気と体力のいる作業なわけで、無欲でないととてもできない。これできる人はホントに凄いと思うよ。
そんなわけで、最初はタイトルにある「シリコンバレー」と「将棋」が一体どう関連してるのか意味不明だったんだけど、読んでみるとナルホドそうだなと思った。上で述べたように、将棋会のトッププロがまるでシリコンバレーの技術者・研究者に感じられた。特にオレの場合はICPCとその参加者がイメージとして重なった。
それにしても、梅田さんの文章力は素晴らしい。対局観戦ブログのリアルタイム更新なんか負荷高いはずなのに、それを見事な構成と文量でやってしまっている(凄い頭脳と体力だ)。周囲の棋士の予測の当たり外れなんか、リアルタイムだからこそより面白くなるよね。
小学生のころ囲碁将棋クラブとやらにいた自分も決して強くはないし今は打たないけど、プロの将棋の面白さを強く感じてYoutubeを見漁ってしまった。トッププロの攻防は良い解説があると相当楽しめるからオススメ。そして梅田さんGJ!。