大学院修士課程(工学)でのお金の工面

自分は親に学歴がなく収入も少ないので随分前から奨学金をもらっています。大学院に行くときも「仕送りはできないからあんたの好きにしていいよ〜」という感じで進学しました。今の大学は私立なので当然授業料は高く(修士は年100万程度)、進学の際は正直悩んだのですが、周囲の協力もあって結果的には国立より安く済んでしまったような気がします。要するに、う・ま・く やりさえすれば結構なんとかなるのですが、特に実情を知らない高専生などはイメージだけで語ってることが多いような気がします。露骨に金額を書いたので是非参考にしてもらえればと思います。^^
大学院での主な出費といえば授業料*1と生活費*2でしょう。これだけでも年に200万前後必要ですから特に裕福でない家庭にとっては大学院進学は結構悩ましい問題ではないかと思われます。これの有力な解決策が奨学金です。

奨学金はローンと同じ??

この奨学金、名前の響きは大変素敵ですが、実質は貸与(たいよ)なのでいわゆる「ローン」になります。なので「奨学金もらったら将来返済が大変だから・・・」という意見もよく聞きます。このリスク回避な考え方は分からないでもないのですが、個人的にはモッタイナイ判断という気がします。なぜなら、普通のローンにはないお得なオプションがあるからです。

日本学生支援機構奨学金

おそらくどの学校にもある一番有名な奨学金は『日本学生支援機構(旧育英会)』の奨学金です。これは貸与なので返済義務があるのですが、一方でローンにはない偉大な二つの特長があります。

  1. (第一種奨学金だと)利子がつかない。
  2. 卒業時に優秀であれば返済が半額or全額免除される。

まず 1 ですが、この奨学金には第一種・第二種の二つの種類があって、前者は無利子で借りれます。ウチの大学では申請者の上位1/2〜1/3がもらえる感じで、真面目にやってる人にとっては審査も難しいものではありません。今どき無利子で金を貸してくれる金融機関なんてないことを考えると非常にお得ですよね。あ、別に車買え!って言ってるわけじゃなくて、行動の選択肢の幅を持っておくためにも手元にある程度の現金があったほうが良いと思うからです。立替えやカンファレンス等の参加、就職活動は結構お金が要りますし。
次に 2 ですが、この奨学金は卒業時に何かしら強み(成績や研究業績など)を持っていると、返還を免除される可能性があります。基本的には学内で選考されるようなので、まず学内上位にいる必要があるのですが、そこをパスすればほぼ免除決定です。肝心の免除枠については、ウチの場合、掲示を見た感じでは第一種受給者の3割程度ではないかと思います(全額免除は数名だが)。決してべら棒に難しいわけではありません。
私の場合、第一種を二年間いただいて半額免除になりました。月88,000円ですので2年で2,112,000円。うち半額の1,056,000円が免除です。学費の一年分が無料になった計算です。

企業や財団の奨学金

私の場合、学生支援機構だけでは足りなかったので、さらに企業からの奨学金も頂きました。企業やらの奨学金は給付(返さなくていい)と貸与(ローン)とが様々あります。だいたい給付が多いかと思います。
給付奨学金は返さなくてよいので、どんどんこれを貰えばいいじゃん!と言いたくなるのですが、そうは問屋が卸しません。多くの給付奨学金給付奨学金の二重取りを禁止にしているからです。なので、ある給付をもらったせいで、ほかのもっと高額な給付への応募資格がなくなった、というケースが起こるのですね。給付を狙う場合は、このあたりをしっかりチェックして金額もそれオンリーでやっていけそうか考える必要があります。それと、給付の場合、留学生や在日外国人、母子家庭などの方々を対象にしたものが圧倒的に多く、特別な事情が何にもない人向けのものは意外と少ないです。あるいはメチャメチャ能力高い人にIT企業がどーんとサポート、みたいな形とか。それ以外のものとなると必然的に競争率も高いものになります*3
次に貸与の場合。私が頂いたのもこちらです。貸与の要領は学生支援機構とだいたい同じで、もちろん二重取りとかの制限もありません。しかも、こちらでもある条件を満たせば返さなくてよい場合があります。私の頂いた帝人久村奨学金は「将来大学などの研究者になれば返還免除」という項目があり、もしこれに当てはまれば実質給付と同じになります。自分の将来設計と照らし合わせて申請すると良いですね。この手の奨学金は応募手続きが煩雑で選考面接も何度かあったり、受給後もパーティー参加義務?があるなど、学生支援機構に比べるといろいろと大変だったりはします。が、そういうところでいろいろと社会勉強にもなりますし、交通費も出ましたし、頂く金額に比べたら大した労力じゃないと思います。
ちなみに帝人久村奨学金の面接の際は、最初に部長さん方を相手に研究発表し、2回目は社長さんや学長さんの前で発表させていただきました。なかなかない機会なので個人的には楽しかったです。お世話してくれた方曰く、(やはり帝人だからか)バイオ系に比べて工学系は凄く応募者が少なくて、一次選考の時点で自分と慶応の方だけでした(^o^;)。

学内の給付奨学金

これ以外にも、大学独自の給付の奨学金を用意しているところがあります。特に私立はその傾向が強く、早大はその部分のサポートがかなり手厚いです*4。ウチの大学の場合、基本的には1年に1つまでという条件で給付奨学金を頂けます。基本的に二重取りはできないのですが、そのラインとは別枠で行われる学内奨学金もあったりして、それだと二つもいけます。最近はいろいろルール改正されたような感じなので分かりませんが。
私の場合、1年目が大隈記念奨学金で、2年目は校友会給付一般奨学金大川功情報通信学術奨学金で、総額で1,260,000円になります。これで初年度の授業料と入学金をチャラにできた計算です。先ほどのと合わせれば、授業料0で大学院を過ごしたことになります。私立=高い、というイメージが先行しますが、できる人*5には徹底的にサポートするのが私立であったりもします。自分が優秀なのか平均的なのか、先生や先輩にたずねるなりしてよく調べておきましょう。

授業料免除

国立大学の友人などに聞いたところによると、優秀な人だと授業料免除になるようです。ということは60万程度の給付と同じことになります。あまり詳細は知らないのですが。
また他のある方は、比較的有名ではない私立大学に通っていたのですが、同じくずーっと授業料免除だったので0円しか払ってないと言ってました*6。人は選ぶでしょうが、行く大学のレベルを下げてそういうのを狙うというのも選択肢としてはあり、というところでしょうか。

学内・研究室内のバイ

最後に大学院ならではの話ですが、TAやRAといった研究室のお仕事のサポートがあります。私はここ数年RAやってました。情報系の場合ですが、特にプログラミングなどのスキルを持った学生はとても有利で、一般的なバイトに比べれば少ない負担でお金を稼げますし、技術があるほど早く仕事が終わるので時給も高くなったりします(笑)。技術的な部分での成長はラッキーですね。筑波大学なんかだとベンチャーが盛んなようで、そこで働いてる(ACな)学生は数人知ってます。これもお金を稼ぎつつ技術を磨いてしまう上手なやり方だと思います。体力・技術・時間をよく考えて選ぶ必要はありますが。
それ以外にも、実験のサンプルになるバイトwとか、パソコン等の設営のお手伝いとか、あまり特殊技能を必要としないものもたまにあります。コンビニなどに比べると(たぶん)割もいいですし、友達も作れたり事務に名前も覚えられたりします。ウチの学校だと(安いけど)留学生のチューター制度がありますね。
せっかくの若い貴重な時間なので、バイトも効率よくやったほうがいいんじゃないでしょうか、というのが自分の意見。

賞金稼ぎ(笑)

研究室のプログラミングのバイトなんてレベルが低いぜ!なーんて方は、片っぱしからコンテストに出て賞金を稼ぐとかもありかもしれません。優勝すれば数十万!。あとはIPA未踏ユースなんかもそこそこのお金(300万?)と、お金以上に得られるものがあると思います。俺は出したことないけど。興味のある人はググってはいかかでしょうか。

申請時期や手続き

奨学金の申請時期はホントにさまざまなのですが、学生支援機構の場合は4月の入学直後になります。振込は確か7月くらいなので、その間は一切お金が入ってきません。このような序盤の貧困には要注意です。お金の工面はそこまで考えておく必要があります。
あと申請方法ですが、ウチの大学の場合、奨学金申請がシステマチック化されていて、配布される冊子をみて共通のフォーマットで申請作業を行うだけであらゆる奨学金にエントリされたことになり、学校がコンピュータで成績や収入を基に自動的に推薦を振り分けるようです*7。証明書などを一度だけ準備すればよいので楽です。もちろん例外もあってそれらは別途申し込む必要があります。・・・ただこの奨学金システム、結構珍しいみたいですね。他大学ではどんな感じでしょう??。

むすび

今回のケースが多くの方に当てはまるということは当然ないとは思うのですが、優秀な学部生が金銭的な面で進学を諦めるのはモッタイナイということを言いたくて書きました。ラッキーなことに先輩達がこういうのに強い方が多かったので自然に情報収集してたのですが、無頓着な学校・研究室もあるようなので注意したほうがいいと思います。申請は面倒ですが得るものは大きいと思います。
あ、内容については絶対そうだ!と保証するものではないので自己責任でお願いしますね^^。成功確率を高める方法は日々精進し結果を積み上げるのみだと思います。ぜひぜひ詳しい先生や先輩にきいてみてください。
長文お付き合い頂きありがとうございましたー。

*1:目安は年間で国立60万・私立100万くらいかな。初年度はさらに入学金が必要。

*2:自分の場合、月10万くらいかな??。都市部だとさらに+4万くらいか。

*3:個人的にはこっちにももっと力を入れてくれ!と言いたいです。もちろん受給者にもそれ相応のものは求めつつ、ね。

*4:でも授業料免除はない。大学曰くそういう方針らしい。

*5:とっても自分で言いにくいんですが(笑)。

*6:失礼な言い方になってしまいますが、大学名には似合わないくらいとてつもなく優秀で、そしてGoogleに就職されました。

*7:安定結婚問題??w